ヘアカラー後に「頭皮がかゆい」「顔が腫れた」「息苦しかった」などの症状が出たことはありませんか?
こうした症状、体質的な問題だと思ってそのままにしていませんか? 実はそれ、「ジアミンアレルギー」という深刻なアレルギー反応である可能性があります。
ジアミンとは、ヘアカラー剤に含まれる成分のひとつで、「染まりを良くする」ために欠かせない化学染料です。しかしこのジアミンは、アレルギー反応を引き起こす可能性がある物質でもあり、一度アレルギーを発症してしまうと、次回以降のカラーでさらに重い症状に繋がるリスクがあります。
症状が軽いうちは「かゆい」「赤い」などで済むこともありますが、重症化すると「顔全体の腫れ」「まぶたが開かない」「耳や首まで赤く腫れる」「頭から汁が出る」「呼吸が苦しい」など、日常生活に支障をきたすレベルになることも。
こうした反応が一度でもあった方は、今後のカラー施術について慎重に考える必要があります。
美容師として現場で多くのお客様を施術してきた経験から、今回は今注目されている「血液検査によるジアミンアレルギー診断」について、美容の現場目線でわかりやすく解説していきます。
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目次
ジアミンアレルギーとは?
ジアミンアレルギーとは、ヘアカラー剤に含まれる「酸化染料」によって引き起こされるアレルギー反応のことを指します。中でも代表的な成分が、パラフェニレンジアミン(PPD)やトルエン-2,5-ジアミンなどの化学染料です。
ジアミンは発色が良く、色持ちにも優れているため、白髪染めやファッションカラーなど多くの市販・サロン用ヘアカラーに広く使われています。しかしその一方で、強いアレルゲン(アレルギーの原因物質)としても知られており、体質によってはアレルギー症状を引き起こすリスクがあります。
一度ジアミンアレルギーを発症すると、その後は極微量でも反応するようになり、カラー剤を塗布した数時間後から数日以内に、以下のような症状が現れます:
- 頭皮のかゆみ・赤み
- 顔やまぶたの腫れ
- 耳・首筋の炎症
- 水ぶくれや浸出液
- 頭皮からのただれ
さらに重症化すると、「呼吸がしづらい」「寒気や発熱がある」「全身に蕁麻疹が出る」など、アナフィラキシー反応と呼ばれる命に関わる状態になることもあります。
アレルギーには大きく分けて2種類あります:
- 遅延型アレルギー:染毛後、数時間〜2日後にかけて症状が出る。ジアミンアレルギーの多くがこれに該当
- 即時型アレルギー:染毛直後〜2時間以内に反応が出る。アナフィラキシーなど重症例はこちら
「昔は平気だったのに、突然かゆくなった」「年々反応が強くなってきた」という方も多くいらっしゃいますが、これは蓄積的な感作(免疫がジアミンに敏感になっていく)によって、ある日突然アレルギー体質に変わることがあるためです。
美容師としては、初回からの異変だけでなく、「違和感の積み重ね」にも注意を払う必要があるアレルギーだと考えています。
血液検査でジアミンアレルギーは分かるのか?
結論から言えば、現時点では**「一部の即時型ジアミンアレルギーのみ」**が血液検査によって確認できる可能性があります。
2021年、ホーユー株式会社と藤田医科大学の共同研究により、ジアミン成分(主にパラフェニレンジアミン=PPD)に反応する特異的IgE抗体を検出する血液検査法が発表されました。
この検査法は、従来のパッチテストのように皮膚に直接薬剤を塗布する必要がなく、採血だけでアレルギーの有無を判定できるという画期的なものです。
ジアミンは低分子の化合物であり、IgE抗体が単体で認識することはできません。そこで本研究では、ジアミンが体内のタンパク質と結合することでできる「ジアミン-タンパク質複合体」をアレルゲンと見なし、それに反応するIgE抗体の有無を調べる仕組みが採用されています。
この仕組みにより、従来の皮膚テストではリスクが高かった「即時型アレルギー」の診断が、より安全かつ正確にできる可能性があるとして期待されています。
ただし現時点では、この検査法はまだ研究段階であり、一般の医療機関で受けることはできません。
また、血液検査の対象はあくまでも「即時型アレルギーに対するジアミン」だけであり、以下のような点には注意が必要です:
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遅延型アレルギーには対応していない(ジアミンアレルギーの大半はこちら)
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植物染料(ヘナ・インディゴ)やカラートリートメント、マニキュアなどは検査対象外
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保険適用や実施医療機関も未整備
そのため、今後の実用化が非常に期待されている一方で、現時点では「補助的な手段」であるというのが正確な理解になります。
今後この血液検査が普及すれば、皮膚テストが難しい方(重症アレルギー歴のある方や高齢者など)にも診断の選択肢が広がると見込まれており、美容と医療の現場の架け橋として非常に意義深い技術といえるでしょう。
パッチテストとの違い
ジアミンアレルギーの診断において、現時点で最も信頼性が高く、一般的に利用されている方法が「パッチテスト」です。
■ パッチテストとは?
パッチテストは、カラー剤や成分を皮膚に塗布し、その後48時間観察することで、遅延型アレルギーの有無を判定する検査方法です。
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病院では専用のアレルゲンキットを背中に貼付する形式(閉鎖型)
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美容室では、使用予定のカラー剤を腕の内側などに直接塗布する簡易方式(オープンテスト)が主流
2日後・3日後・1週間後と複数回の判定が必要なケースもあり、時間と手間はかかりますが、
皮膚の深い反応を正確に把握できるため、今でもアレルギー診断の基準となっています。
■ 一方、血液検査はどう違う?
最近注目されているのが、ホーユーと藤田医科大学の共同研究で開発された
**ジアミンに対するIgE抗体検査(血液検査)**です。
この血液検査は、即時型アレルギー(アナフィラキシーなど)に対して、
ジアミン成分と結合したタンパク質に反応する特異的IgE抗体の有無を調べるもので、
今後パッチテストのリスクを回避する手段として期待されています。
しかし、以下のような制約があります:
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対応しているのはジアミン(主にPPD)に限られる
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現段階では研究中で、病院での導入は限定的
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ヘナやマニキュア、カラートリートメントなどジアミン以外の染料には対応していない
パッチテストと血液検査は「併用と使い分け」がカギ
血液検査=万能ではありません。現実には、ジアミン以外の染料にもアレルギーは存在し、
またジアミンアレルギーの多くは「遅延型」であるため、パッチテストは今後も欠かせない診断方法として残り続けるでしょう。
一方で、血液検査の実用化が進めば、
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過去に重度アレルギーを起こした方
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パッチテストが難しい高齢者・皮膚疾患を抱える方
にとって、安全な診断法の選択肢として有望です。
つまり、美容室と病院の双方が連携しながら、お客様に最も適した安全な染毛方法を選ぶ時代が来つつあるのです。
「ジアミンだけじゃない」アレルギーの真実
多くの方が「ノンジアミン=安全」と思いがちですが、それも実は誤解のひとつです。
たしかにノンジアミンカラーは、ジアミン(PPDやトルエン-2,5-ジアミン)を含まないため、ジアミンアレルギーのある方には選択肢となりますが、「ノンジアミンだから絶対にかぶれない」「安心して使える」と言い切れるわけではありません。
ヘアカラーのアレルギーの本質は、“アレルゲン(アレルギーの原因物質)に体が過剰に反応するかどうか”にあります。つまり、ジアミン以外の成分であっても、人によっては十分にアレルゲンとなり得るのです。
これは、たとえば「食物アレルギー=小麦だけが原因ではない。卵や牛乳でも反応する人がいる」のと同じ構造です。
実際、以下のような成分でもアレルギー反応の報告があります:
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ヘナ、インディゴなど植物由来の染料
→ 自然由来でもアレルギーを起こす場合がある(特にヘナに含まれるローソンという色素) -
タール系色素(マニキュア)
→ 鮮やかな発色のために使われるが、皮膚刺激やアレルギーの原因となることも -
着色料・保存料・香料(カラートリートメント)
→ セルフ用として手軽に使われているが、複数の添加物により肌トラブルが起こるケースも
特に近年は、ホームケアとしてのカラートリートメントの利用が急増しており、それに伴って「染めた翌日からかゆい」「頭皮が荒れた」という相談を受ける機会が明らかに増えています。
こうした背景から、ジアミンに限らず「初めて使う製品」「以前に違和感を覚えたことのある成分」に対しては、ノンジアミンであっても必ずパッチテストを行うことをおすすめしています。
アレルギーは、成分の善悪ではなく“自分の体との相性”で起こるもの。
「自然成分だから安心」「市販だから大丈夫」という思い込みが、かえってリスクを招いてしまうこともあるのです。
SafeBeauでの対応・美容師ができること
当サロンSafeBeauでは、「アレルギーが不安だけど染めたい」「以前にトラブルがあって慎重に進めたい」といった方のために、丁寧なカウンセリングと安全確認を重視した対応を行っています。
■ 施術前のカウンセリングとパッチテスト
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初めてのカラー剤を使用する方には、48時間前のパッチテストを推奨(ご希望に応じて対応)
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使用予定のカラー剤をご説明し、肌状態や既往歴を詳しく伺ったうえで適切な判断をご提案
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特にアレルギー歴や敏感肌の方には、施術前の確認・保護オイル使用・ゼロテク技術を徹底
■ ジアミンアレルギー診断済みの方への施術提案
以下のような、ジアミンを含まない施術メニューをご用意しています:
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ヘアマニキュア(髪の表面を染めるタイプ)
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カラートリートメント(低刺激で家庭用にも対応)
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一時着色料(スプレー・ファンデーションタイプなど)
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Wプロセス(ライトナーで明るくしてからマニキュアなどを重ねる)による明るめの仕上がり対応
SafeBeauでは実際に、
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「他の美容室で断られた」
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「セルフカラーでかぶれて不安だった」
といったお客様からも多くご相談をいただいています。
■ 安全第一の判断とフォロー体制
症状が出たことがある方、または違和感を感じたことがある方には、無理に施術を進めることは一切ありません。
まずはしっかりとカウンセリングを行い、現在の頭皮・肌状態、カラー履歴などを丁寧に把握したうえで、
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「今、何が使えるか」
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「どこにリスクがあるか」
を明確にし、最も安心できる染毛方法をご提案しています。
アレルギーの不安がある方にも、染めることを諦めずに済むよう、SafeBeauは美容師としての専門知識と、安心して話せる環境づくりの両面からしっかりサポートしています。
まとめ|血液検査とパッチテストの“使い分け”が大切
近年、ホーユーと藤田医科大学による「血液検査でのジアミンアレルギー診断」に関する研究が注目されています。これは、今後の即時型アレルギー診断における大きな前進になる可能性を秘めています。
とはいえ、現時点ではまだ研究段階であり、一般の病院で検査を受けられる状況には至っていません。また、判定できるのはあくまでも「即時型アレルギーの中でもジアミン(PPDなど)に反応するケース」のみで、遅延型アレルギーや他の染料には対応していない点も押さえておく必要があります。
一方、パッチテストは今なお「ジアミンアレルギーを診断する上で最も信頼性のある方法」です。遅延型アレルギーに対応しており、ジアミン以外の染料(ヘナ、カラートリートメント、マニキュアなど)への反応も確認できます。
つまり、**血液検査とパッチテストは“競合するもの”ではなく、“使い分けるべきもの”**です。
ノンジアミンカラーであっても、体質によってはアレルギー反応が出ることがあります。とくに敏感肌の方、以前にカラー剤で違和感を感じたことのある方は、カラー前に必ずパッチテストを行うことをおすすめします。
美容師としては、お客様が安心してヘアカラーを楽しめるよう、事前の安全確認と丁寧な説明を欠かさないことが何より大切です。
あなたの髪色を楽しむ未来のために。
正しい知識と、たった一手間の“事前準備”がトラブルを防ぎ、安心につながります。
【筆者:SafeBeau 渡邉/美容師歴15年/ジアミンアレルギー対応実績多数】
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